銀色の月は太陽の隣で笑う
そもそも、教えてくれた人が大雑把だったので、分量なんてあってないようなものだった。その時はあまりの雑さに、本当にこの人は料理人なのか……と疑ったほど。
「ビックリするくらい雑なんだけど、出来上がるとなぜか美味しいんだよな……」
くつくつと音を立てる鍋を前に、トーマは納得のいかない顔で首を捻る。
その様子を隣の部屋から眺めていたルウンは、やがて漂ってくる匂いに我慢できなくなって立ち上がった。
そうっと足音を忍ばせて、背後からトーマに近づいていく。
鍋の中では一体何が起こっているのか。嗅いだことのない香りが漂い出せば、どうしてもそれが気になって、ルウンは好奇心に突き動かされるようにゆっくりと歩を進める。
トーマの背中が近くに迫ると、気づかれないように慎重に、そうっと脇から手元を覗き込む。
背後からだと見えづらいので少し高さを出そうと背伸びして、それでも見えないから今度は僅かに身を乗り出して、どうしても見えないから次は一歩前に出て――
「こんな感じ。どうかな、見える?」
突然トーマが横にずれて視界が開けたかと思ったら、鍋が自分の方に傾けられた。