銀色の月は太陽の隣で笑う
ルウンが驚いて顔を上げると、可笑しそうに笑うトーマと目が合う。
「ルンってば、猫みたいだったよ。そっと忍び寄ってくる感じとか、一生懸命覗き込もうとしているところとかが凄く」
気づかれていたのかと思うと途端に恥ずかしくなって、ルウンは堪らず俯く。その瞬間、鍋の中で揺れる赤紫が視界に広がった。
立ち上る湯気に乗って、先程から漂っていた嗅ぎ慣れない匂いが強く香る。複雑なスパイスと、爽やかなハーブが混じりあった、不思議な香り。
「もうすぐできるよ。あとはカップに注げば完成」
言いながら鍋を火から下ろしたトーマは、あらかじめ調理台に並べておいた二つのカップに、中身をこしながら注いでいく。
鮮やかな赤紫の液体が、網目を通ってとぽとぽとカップに注がれていく様子を、ルウンは興味津々でジッと見つめる。
「はい、できた。行くよルン」
鍋を置いて、カップを二つ手にしたトーマは、ルウンを誘って歩き出す。
あとを追いかけたルウンは、促されるままに元の椅子に腰を下ろした。