銀色の月は太陽の隣で笑う
「どうぞ、召し上がれ」
目の前に置かれたカップを、ルウンはまず興味深げに見つめる。
「冷めないうちに飲んでね」
その様子を苦笑しながら眺めつつ、トーマは先に一口。
思わずほうっと漏れた満足気な吐息に、ルウンもすかさずカップを両手で包み込むようにして持ち上げた。
カップの中で揺れる赤紫の上には、薄切りのレモンが一枚ぷかりと浮かんでいる。
立ち上る湯気から香る初めての香りを目一杯吸い込んでから、何度か息を吹きかけてようやくルウンも一口。
どこか大人の風味を感じるぶどうの中にシナモンが香り、何かがピリリと舌を刺激した。
ほのかにショウガを感じたと思ったら、爽やかなレモンがハチミツの甘さをまとって口に滑り込んでくる。カリッと一口齧って飲み込めば、何とも言えない複雑な味が口いっぱいに広がった。
トーマに習うように、ルウンもほうっと吐息を漏らす。
「ホットワインって言うんだけど、ルンは初めて?」
“ワイン”という単語に、先ほどトーマが見せた瓶の中身を、ルウンはようやく理解する。