銀色の月は太陽の隣で笑う
カップを取り上げようと伸ばしたトーマの手が、その言葉にピタリと止まる。
「ル・ウ・ン!」
もう一度、今度は一音ずつ区切るようにして放たれたルウンの言葉に、トーマは「ええっと……」と困惑しながら返す言葉を探す。
「ルウン!ルウンは、ルウン、だから!」
猫がシャー!っと歯を剥きだして威嚇するように、ルウンがだんっとテーブルを叩いてトーマの方に身を乗り出す。
「わ、分かっているよ。分かってはいるんだけど、僕の故郷ではそういう時、“ルーン”って発音するから、上手く言えないんだって最初に説明し」
「トウマの故郷、どんなところ?」
「……え?」
先ほどの怒りはどこへやら、突然ころりと話題を変えたルウンが、今度は目をキラキラさせて更に身を乗り出してくる。
今にも椅子から転げ落ちそうなルウンに、トーマは気が気ではない。
「えっと……東方にある町だよ。大きな川が流れていて、水が綺麗だから魚が凄く美味しいんだ。元々は小さな村が点在していたのが、寄り集まってできた町らしいんだけど。だからなのか、人の距離がすごく近くて。えっと、なんて言うのかな……あったかいところ、かな」