銀色の月は太陽の隣で笑う
階下から聞こえてくる物音が気になってしょうがないトーマは、様子を窺うようにして一段一段階段を下りていく。
足音を忍ばせるようにして五段ほど下りたところで、それ以上足が動かなくなった。
これより先は、今はどうにも行きづらい。ヘタレな自分に内心ため息をつきながら、トーマはその場に腰を下ろした。
聞こえてくる音に黙って耳を澄ましていると、また昨日の光景が蘇る。
飛び込んできたルウンを腕に抱いた時に感じた、柔らかさや温かさ、想像以上の小ささや華奢な体つきは、思い出す度に愛おしさがこみ上げる。
家族や友達、今まで出会った人達に対する”好きだ”という気持ちとはまた違う、もっと深くて強い感情。
それをルウンに抱いてしまったと自覚した時から、当然の流れで、相手が自分に抱いている感情も気になった。
「嫌われてはいない……はず。……多分」
雨を凌ぐ屋根を持たない旅人であるとは言え、嫌な感情を抱く相手に部屋を貸してくれるとは思えない。