銀色の月は太陽の隣で笑う


「ダメだ……分からん」


ため息混じりに呟いて、全てを投げ出すように体を後ろに倒すと、ゴチンと音がして段差に後頭部を打ち付けた。

自分が階段の途中に座り込んでいたことさえ忘れていたトーマは、鈍く痛む後頭部をさすりながら体を起こす。


「好きとか嫌いとか、言葉にすると簡単なのに……。なんでこんなに複雑なんだろう」


大きく“好き”とは言っても、そこにも様々種類があり、程度の違いがある。それを思うと、ますますルウンが自分に抱いている感情を計りかねた。

嫌われていないというのも、普通だというのも、所詮は仮定に過ぎなくて、本当のところはトーマには分からない。

都合のいい仮定ばかり組み立てている自分に気がついたとき、思わず自嘲的な笑みが零れた。

そして次の瞬間、ダンッと響いた力強い音に、トーマはビクッと肩を揺らす。

もう二段ほどそっと階段を下りると、音の正体を探るためにキッチンの方を窺う。

断続的に聞こえてくるその音は、何かを叩いているようであり、また何かに叩きつけているようでもあるが、トーマの位置からではそれがなんであるのかは分からない。
< 203 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop