銀色の月は太陽の隣で笑う

相変わらずキッチンからは、断続的にダンッと力強い音が響いてきている。


「……同じ気持ちでいて欲しいなんて、そんな大層なことは望まないから、せめて――――」


せめて、どんな種類であれ“好き”であって欲しいのか、それとも普通でいいから“嫌い”でさえなければいいのか。自分がどちらを望んで“せめて”と口にしたのか、途中で分からなくなって、トーマは言葉を途切れさせる。

どちらにしても、自分はいずれここを出て行く。

それは変わらないことで、変えるつもりのないこと。

ひとところに留まらず、気持ちの赴くままにどこへでも流れていく。そんな生活に憧れて旅人となり、旅をしながら食べていくために物書きとなった。

まもなく雨季は終わり、青い空に太陽が輝く季節がやって来る。

熱気を含んだ風のおかげで長く歩くのは少し辛いが、木陰で昼寝をするのは気持ちいい季節が。


「ずっとそばにいたいけど、でも旅も続けていたいなんて、矛盾しているよな……」


どちらか一つは選べない。でも、どちらも捨てたくはない。

また一つ悩ましげなため息を零して、トーマはそっと後頭部をさする。

打ち付けたそこが、不意に鈍く痛んだのだ。





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