銀色の月は太陽の隣で笑う

トーマが階段に座り込んでため息をついている頃、ルウンはモヤモヤと頭の中に蔓延るものを振り払うために、一心にパン生地を叩いたり叩きつけたりしていた。

これで少しは気が紛れるかとも思ったのだが、ふとした拍子にトーマのことを思い出してしまって、その度に胸がツキツキと痛む。

もう充分こねられた生地は次の工程である発酵を心待ちにしているが、ルウンは中々次に移ろうとはしない。

どこかぼんやりとした状態で、まるで機械人形のように何度も同じ動きを繰り返していた。

なぜ、トーマの態度が変わってしまったのか。なぜ自分は、そのことがこんなにも悲しいのか。なぜ、トーマのことを考えるとこんなにも胸が痛いのか。

誰にもぶつけられない“なぜ”が、頭の中にどんどん溜まっていく。

気を紛らわせるために始めたのに、結局思ったように気が紛れなかったその作業を一時中断して、ルウンは後ろを振り返る。

視線の先には屋根裏へと続く階段。誰もいないそこに、ついトーマの姿を探してしまう。
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