銀色の月は太陽の隣で笑う
不意に枕が欲しくなって伸ばした手は、しかし虚しく空を掴む。
驚いてパッチリと開いた目で自分の周りを見渡して、トーマは思い出す。
「そうだ……邪魔になるといけないからって、下に置いてきたんだった」
ルウンが移動させていなければ、まだきっと椅子の上。
と言うよりも、何も考えず床に置いた荷物を、ルウンがそっと拾って椅子の上に置き直したのだ。
トーマ自身よりもトーマの荷物を大切に扱ってくれるルウンの姿は、思い出すとふっと笑みが零れる。
トーマの肩に引っかかっている時以外は、ほとんど地面の上に置かれている荷物は、当然のように薄汚れている。
それをルウンは、何の躊躇いもなく床から椅子の上へと移動させた。
その優しさが、トーマには嬉しかった。
こんなふうに行く先々で出会った人の優しさに触れるのもまた、トーマにとっては旅の醍醐味の一つとなっている。
それを噛み締めながら体を大きく伸ばして、先ほど半ば這うようにして上がってきた階段を、今度はちゃんと立ち上がって下りていく。