銀色の月は太陽の隣で笑う

階段を一段下りるごとに甘い香りが漂ってきて、トーマは思わず鼻をヒクつかせた。


「なにか、手伝おうか」


火のそばに立っていたルウンに後ろから声をかけると、ビックリしたように振り返った顔が、すぐさまふるふると横に振られた。

見れば、火にかけられた小鍋がくつくつと音を立てていて、既にカップも二人分用意されている。

座って待っていて欲しいと、いつものたどたどしい言葉で伝えてくるルウンに、トーマは素直に頷いた。


「じゃあ、お言葉に甘えて。でもなにかあったら、遠慮なく呼んでね」


ルウンがコクっと頷いたのを確認して、トーマはテーブルに向かう。

一階は、寝室だけが壁で区切られて見えないようになっているが、他の部屋はひと繋ぎになっていて、テーブルについていても、鍋を一心に見つめるルウンの姿がよく見える。

その姿をなんとなしに見つめながら椅子に腰を下ろしたトーマは、お尻の下に感じた違和感にすぐさま腰を浮かせた。


「ああ、忘れていた」
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