あたしとお義兄さん
16.その朝は15Rに収まるのか?




「へ?いきなり貴方、何を…」
「──────私が貴女に夢中なのは御存じだったでしょう?」

 もちろん大事にしてくれていたのは知っている。だが、それは……

「貴女はそれを知っていて、私を焦らしたり跳ね除けたりして反応を楽しんだ筈だ。
 私は楽しい玩具だったでしょう?」

 悪魔的な微笑みを浮かべ、更に彼はずい、と近付く。

「そんな……」

 図星の処があるので、強く否定できない自分に焦った。
 乱れた黒髪に隠された強く光る艶やかな瞳に、すっかり呑まれてしまっている。

「いいんですよ、それは。ただ、貴女のものでありたい。────とうとう私は気付いてしまったんです。自分の心の中の願いに。
 貴女の、貴女だけの男になりたいと」

 ベッドの端まで追い詰められ、壁に両腕で挟まれて、鈴子は動けなくなった。

「独占されて、言いなりになりたい。私の腕の中で幸せに輝く貴女を見たい。私だけが貴女の男として振り回されたい」

 眉を指先でなぞられ、額に掛かった髪をそっと掻きあげられる。


「──────誰にも渡したくない」


 唇が落ちてくる。
 硬直していた鈴子は難なくそれを受け入れてしまった。

「朝も夜も一緒にいたい」

 直ぐに狂おしく抱きしめられて、髪の中に手が差し込まれ押し倒された。
 そこでようやく彼女は我に返った!

「うわっ!静馬さん、マズい、そりゃマズいよッ⁉︎」
 もがく愛しい女の身体を、息を乱した静馬がテキパキと押さえ込み、ブラウスを剥いだ。

「何が、ですか?」

 スカートのジッパーに手を掛けられ、それを必死に防ごうとするが、やはり一瞬の隙に剥ぎ取られてしまう。

「何がって、貴方、こんな風に一線越えちゃっていいの⁉︎お義父さんになんていうのよ‼︎
 あ、駄目、いやっ」
 ブラのホックを外され、弛んだ胸元にいきなりキスされた鈴子は、色っぽい叫び声を上げた。

 その響きに触発され、静馬は指を彼女の柔らかい肌に滑らせる。
 ひ、と反応して開いた唇をそっと塞いだ。

 最初は怯えを拭うように柔らかく合わせ、やがて歯列を割って舌を絡ませた。
 軽く口腔内を扱き、彼女の唾液を飽く事なく啜って喉を鳴らして。

 過去のどのくちづけより甘く、容赦のないそれに、鈴子はぼう、と気が遠くなるのを感じた。


「私がお嫌いですか?」


 優しく髪を撫でられ、彼女の身体は羞恥に染まる。
 だが、静馬の逆の手は下着の下から直に差し入れられ、乳房に甘い快楽を与え続けていた。


「あ、ああっ、え?ええ⁉︎今、き、く…ソレ」
「嫌いですか?」

「う、嫌いじゃ、あっ!」
「なら、いいですね」

 最後まで返事も聞かずにどんどん先を進む美しい青年に対し、まんまと嵌められた鈴子は彼の暴挙を止める術など、唯一つとして持ってなかった。

 ただ与えられる刺激に意識を白濁とさせられて。
 野に放たれた静馬の感情は、再び焦がれた小さな唇に向かう。
 再び覆い被さり上から固定すると、また思う存分鈴子を味わい、甘い口の中を犯し尽くして漸く離れた。

「───────はあ」

 空気を求めて大きく息をする鈴子の耳を、静馬は舐めしゃぶり、息を吹きかけながら愛撫を施す。

「ぎゃあ!─────静馬さん!貴方っ、いつの間にここまで吹っ切れたんですかッ⁉︎」

 必死で義兄の胸を押しながら、切れ切れにそう叫ぶ鈴子に、

「貴女が他の男といるのを見た時からです」

 口調は冷静に、しかし頭の中はといえば、『二足歩行の暴走状態のナニカ』が雄叫びを上げている状態の静馬は、そう答えながら彼女の両手を軽々と片手で纏め、首筋に唇を這わせた。

「うヒャア⁉︎ありゃ、唯の加害者でしょうがァッ」
「ええ、でも単なる切っ掛けですから。私にはアレが別に何者でも構わないんですよ」


 やべえ、何んか今更だけど、吹っ切れてる!
 熱い、熱い、私の何処かが沸騰するよ‼︎
 つか、久しぶり過ぎて触られるとこ触られるとこ過敏になり過ぎ、やだコワイ何コレ上手い。
 何よりなんで襲われているあたしよりも襲っている方がゾクゾクする程、色気あるんデスか───────(1秒)


 多角的な恐怖に鈴子が暴れた所為で、すっかり浮いた脚を掴み、その間に静馬は身を滑り込ませた。

 したがって、フォームとしては『どうぞ、召し上がれ ♪』状態になってしまい、義妹の顔色は青色方面にぶっちぎり振り切れていた。

「ひいいい─────誰かっ、助けてぇえっ!」
「往生際が悪いですよ、リン」

 無情にも色気の塊けしんにそう告げられ、義兄が自分の服に手を掛けた、まさにその時、




 ───────ごすっ!




 鈍い音がして、その姿が横倒しに消えた。

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