桜時雨の降る頃
ふーん、とつまらなそうに口を尖らせてしまったのはそんな思いの表れだったんだろう。


「じゃあ、断ったっていうのも?」

「うん、まぁ」

「なんで?」

「なんでって、好きじゃないからに決まってんだろ?」

陽斗が答える前に横から朔斗が口を挟んだけど

わたしは陽斗を見た。

「……朔斗の言うとおりだよ? だから、ありがとうってだけ伝えた。気持ちには応えられないって」

「優等生だなー、陽斗は。花マルをやろう!」

シシシ、と笑って朔斗は陽斗のノートに花マルを描き出す。


「アヤちゃん、なんて?」

バカ朔斗を無視してわたしは質問を続けた。

「好きな人いるから?って聞かれたから、いないけどって答えた」

「それで納得したの?」

「…….うーん」

首を捻って朔斗を見やる陽斗。

その目線に気付いた朔斗が後を続けた。

「”それならまだチャンスあるよね。諦めないから!“ って言われたんだと」

アヤちゃんの真似をしているのか、両手を胸の前で握って上目遣いをかましている朔斗に冷たい視線を投げる。

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