桜時雨の降る頃
「それにしても、あのアヤちゃんを振るなんてただ者じゃないねって言われてたよ」

「えぇ? なんで?」

「なんでって。 アヤちゃんだよ? 学年イチ可愛い」

「あぁ、そっか。でも俺あんま話したことないし。いくら顔可愛くてもそれだけでOKはしないよ」

…………。

プッと笑ってしまった。陽斗らしい答えだ。
人を見かけだけで判断しない。



「陽斗、わたしも花マルあげるよ」

そう言ってさっき朔斗が描いた花マルの隣にもう一個描き加える。

「だろ? こいつホント優等生だよな。先生もさ、俺の事は信用してないのに陽斗はすっげー頼りにしてんの! こないだなんかさー」

先生に陽斗と間違われて用事を言いつけられたときのエピソードを語ってる間、わたし達は笑い合った。


3人で過ごす時間が、わたしは好きだった。

家族みたいなものだったんだ。

でもそれが周りの同級生達に通用したのは小学生まで。

中学にあがると、全てを色恋沙汰に絡められて

わたし達は身動きがしづらくなっていった。




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