桜時雨の降る頃

不思議に思って少し近づくと、話し声が聞こえてくる。


先輩たちの焦ったような、でも甘ったるい声。

相手は……聞き覚えのある、声変わりで最近ハスキーになった陽斗達の声だ。


体育館の壁に張り付くようにして彼らの方へ徐々に近づくと、ハッキリ会話が聴き取れる。


「センパイ、後輩イジメは良くないんじゃないっすか?」

……朔斗だ。

「俺たち、雫のこと邪魔になんて思ってないですよ」

これは陽斗。

声だってソックリだけど、どっちが言ってるか分かる。

ていうか、なんで2人ともいるの?
先に帰っててって言ったのに。

「いじめてたワケじゃないってば〜。あれよ、ちょっと態度悪かったから指導してただけよ?」

……指導という名のイビリだと思う。

「いや、俺わりとハッキリ聴こえましたよ?
邪魔だとか、近づくなとか、俺らが頼んだわけでもないことをベラベラと言ってましたよねぇ?」

相手をガッツリ追い詰めるのは朔斗の得手だ。
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