桜時雨の降る頃
二の句が継げなくなったのか、先輩は黙っているようだ。


沈黙が流れている。


「俺らのために言ってくれたみたいですけど、
やめてもらえませんか? 雫をターゲットにするのも」

陽斗がやんわりと諭すように言った。

「……あんな子と付き合ってるとか思われてもいいわけ?」

「センパイより全然マシですね」

…………こら、朔斗。
相手の怒りを煽りすぎでしょ。

「なっ! ちょっと酷いんじゃない!? 1年のくせに生意気なのよ!」

キャプテンじゃない、別の先輩が食ってかかった。


ところが、キャプテンの冷たい声がなおも続いた。

「どうしよっかな。そんなふうに言われちゃうとますます指導したくなっちゃう」

クスクスと笑っているのが分かる。

こんなに性悪だったんだ、この人。
思わずゴクンと唾を飲み込んだ。


「そんなにあの子に構ってほしくないなら、私と1日付き合ってよ。それで許してあげる。
どう? 簡単でしょ?」



< 20 / 225 >

この作品をシェア

pagetop