桜時雨の降る頃
ゆっくり歩いていると背後から「何言ってんだよ!」と朔斗が叫んでるのが聴こえる。
タッタッと駆けてくる足音が近づいたと思ったら、肩をガシっと掴まれた。
「雫、待てって。ひとりで決めるなよ」
そこには切羽詰まったような表情をした陽斗がいた。
「雫が気にすることなんて何もない。俺たちの中に1人女の子がいる、これは間違ったことなんかじゃない。
雫がいるからずっと楽しかった。だから、そんな悲しいこと言うなよ……」
陽斗の言葉が暗く沈んだわたしの胸に明かりを灯す。
泣きそうだった。
2人と一緒にいるのをみんなに認めてもらえない自分が嫌になっていた。
でも、陽斗は女の子のわたしでいいって言ってくれたようなものだ。
「確かに俺たちが直接関わるのは、雫的には不利になるよな。だから、違う方法考えよう。
な? これから作戦会議!」
パン、と背中を叩かれる。
「ったく、1人で抱え込みやがって。暴走すんなよな」
後から朔斗もやってきて、わたしにデコピンを喰らわせた。
「痛ったぁ!」
もー、と口を尖らせながらも
2人の気持ちが嬉しくてわたしは途中から顔を綻ばせていた。