桜時雨の降る頃
ふっふっふ、と妙な笑い声を上げて
朔斗は続けた。


「雫が俺たちのどっちかと付き合ってることにすればいいんじゃねぇ!?」



………何を言ってるんだろう。

思いっきり口をへの字にして朔斗を冷たい目線で見つめた。


「あれ、何? その冷ややかな目は。
だってそうすれば一緒にいても文句言えないだろ?」


バカなの?

と突っ込む気も失せてしまう。


それ以前に、

「うーん、みんなを騙すのはちょっとな」

そのとおりだ。

わたしが思っていたことを陽斗が言ってくれた。


「だいたいそんな事したって、やっかみは変わらないって。付き合ってるなんて広まったら余計ヒンシュク買いそうだよ……」


げんなりしながらわたしが言うと、朔斗はまだ不満そうに首を捻っている。


「もー、朔斗! その話はナシ! 本当にあんた達を好きな子に悪いでしょ! 人の気持ちを踏みにじっちゃう嘘はダメだよ」


わたしがダメ押しでそう告げると

「ふーん。そっか、雫も好きな奴に誤解されたくないんだ?」

ニッと意地悪げに笑う。




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