桜時雨の降る頃
けれど気持ちは一応伝わったのか、陽斗は穏やかに笑みを浮かばせて「うん」と頷いていた。

なんか嬉しそう……。

わたしが喜んでるから?
ーーいや、まさかね。陽斗はみんなに優しいし。


「雫は、男子部屋来ないの? 昨日何人か来て、先生に速攻見つかってたよ」


「あー、らしいね。わたしはパスかなぁ、あの子達みたいに好きな人がいるとかじゃないし。見つかって半日謹慎とか嫌だし」


「ふーん。じゃあ俺がそっち行こうかな」

「えっ? ダメだよ、陽斗が来たら女子たちがえらいことに」

思わず焦って止めた。
陽斗が来たら格好の餌食になっちゃうからだ。
肉食女子は恐ろしい。


「こっそりだよ、こっそり」

「陽斗にこっそりは無理でしょ。何か内緒でやろうとするとすぐバラしちゃう天然さんなんだから」

「いつの話だよ、大丈夫だって」

「ダメダメ。連帯責任でこっちまで怒られるのイヤ」

ちぇ〜っとぶすくれてるのを尻目に、わたしは残りのお茶を口に含んだ。

時計を見ると、いい時間になっている。


「そろそろ行こ! 遅れちゃう」

「はいはい」

立ち上がって、わたし達は揃ってお店を出た。



集合場所で、みんなの好き勝手な憶測が飛び交っているとは知らずに。

< 44 / 225 >

この作品をシェア

pagetop