桜時雨の降る頃
真っ暗な部屋の中、妙に目が冴えてきてしまったわたしは、眠ることを諦めて、もそり、と布団から起き上がった。
目を凝らして時計を見ると、0時近くになっている。
少し外の空気に触れたいと思い立ち、部屋の窓際へそっと歩いていく。
喫茶スペースの奥には申し訳程度にバルコニーがあり、出入口になっているガラス戸の鍵を開けて外へ出た。
バルコニーに出るのは禁止、と先生たちに言われていたがこんな夜中に誰も見てないだろう。
カラカラ、と音を立てながら戸を閉め、バルコニーの手すりに寄りかかる。
下を覗いてみると、当然だけどあたりは真っ暗で、街灯の光が所々見え隠れするだけだった。
梅雨の時期が目前だからか、うっすら湿り気を帯びた空気が肌にまとわりつく。
うーん、と軽く伸びをしていると
斜め上から「あれ?」と声が聞こえた気がした。
ん? と思って声のした方を振り向くと
そこには
……見憶えあるTシャツを着ている朔斗の姿があった。