桜時雨の降る頃

静寂が支配するその暗闇の中で

妙に朔斗の白いシャツ姿が浮き彫りになって見えた。


「やっぱり雫か。出ちゃいけないんだぜ、バルコニー」


「……知ってるよ。そっちこそダメじゃん、出ちゃ」


「目が冴えちゃってさ。寝れねーから」

「わたしも。気分転換」


「…………」

「…………」


なんでだろう。

お互い、言葉がそれ以上続かない。


朔斗と喋ってるときは、滅多に沈黙なんてしないのに。


「……この距離だと喋りづらいな。部屋出る?」

「平気なの?出て」

「みんな寝てるし。センセー達ももう来ないだろ」

「……じゃあ、行く」

「ん。階段の踊り場な」


そう言って、朔斗は中へ入るようだった。カラカラと戸を開けた音が聴こえる。


わたしも戸に手をかけながら、思った。

本当に大丈夫かな、部屋を抜け出すマネなんてして。

見つからないことを祈るしかない。


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