桜時雨の降る頃
わたしの問いかけに即座に返してくるかと思いきや、沈黙が降りる。


そしてようやく返ってきた答えはひどくぶっきらぼうで小さかった。

「…………知らなくはない」

「は?」


思わず訊き返した。






「俺の初恋、お前」



「…………」



ドクン、と鼓動が一際大きく跳ね上がった。


ちょっと待って。

今、なんて?



「じょ、冗談でしょ? すぐ人のことからかって……」


「そう思いたきゃそれでもいいよ」

溜息混じりに朔斗は膝の上で頬杖をつく。


「いつ……?」

声が震えて、掠れた。

喉の奥が急激に焼き付いたみたいにヒリヒリする。


「小6?」


何も言えなくなった。

朔斗がわたしを好きでいてくれたなんて。

全然、気付かなかった…………



「あーあ、言うつもりなかったんだけどな。
なんか雰囲気に呑まれた。

忘れろよ、今の。今すぐ」

…そんなムチャな。


わたしは、ただただ、呆然と少し照れくさそうな朔斗の横顔を見つめてしまった。


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