桜時雨の降る頃
朔斗がわたしを好きだった時期と

わたしが朔斗を好きと気付いた時期は一致しない。

時がズレることで、もう一生それは噛み合うこともない。


皮肉なものだな、と思うと同時に

とてもやりきれない気持ちになる。



「あー、そうだ。コレやるよ」

「え?」

突如思い出したように、朔斗はわたしの目の前にキーホルダーをぶら下げた。


「昼間さ、足延ばして古くて有名な神社に行ってきたんだ。写真撮ろうと思って」


3年になってから、朔斗はカメラに凝り始めたらしく、どこか出かける時には必ずカメラを持参していた。


「そしたら、そこ猫が集まるんでも有名みたいでさ。グッズになってたから。お前ネコグッズ好きだったなと思い出して」


朔斗から手渡された猫のキーホルダーを自分の手に収めると、わたしはそれをじっと見つめた。


他人には厳しい朔斗が。

こんないかにも女子向けのものをわたしのために買ってきてくれたことが

想像以上に衝撃で

想像以上にーーーーわたしの胸をキュッと締め付けた。


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