ヒステリックラバー
「正直僕は不安でした。傷ついた美優の気持ちに付け込んで惑わせたから、落ち着いたら離れていかれるのではと」
「こんなに想われたら離れられないです」
もう手遅れなほど、直矢さんに毒されてしまった。
「これからはもっと大切にします」
「はい」
「僕の愛情は重いですよ」
「望むところです」
直矢さんの腕が私の腰に回る。体が密着して顔が近づく。お互い同時に目を瞑ると唇が重なる。
「美優、好きです」
「私も、直矢さんが好きです」
そうして何度もキスをした。
私が今までもて余していた愛情を直矢さんにならたくさんぶつけられる。それを返してくれることがとても嬉しい。
「美優、家に送っていきます」
「え?」
直矢さんが急に私の体を放した。
「これ以上僕の部屋に二人でいたら手を出しそうなので」
この言葉に顔が急激に熱くなる。直矢さんも自分の言葉に照れたように顔を逸らした。
「社員旅行の時のように傷つけたくありません。大事にしたいので……今日は送っていきます……」
「はい……」
「でも次にこの部屋に来たら帰しませんので」
真っ直ぐな目を向けられて嬉しさで今度は私が顔を逸らした。そうして突然正広のことが浮かんだ。
私は正広に最後まで抱かれなかった。
直矢さんに相応しい魅力なんて今の私にはないのかもしれない。こんどは直矢さんに拒絶されたら? 私はきっと立ち直れない。
「直矢さん……私……」
気持ちを落ち着かせようと深く息をすると直矢さんは私を穏やかな顔で見つめる。
「自信がないんです……」