ヒステリックラバー
「すみません……」
「洗っていただいてありがとうございました」
直矢さんは先ほどの憂いを感じさせない、いつも通りの優しい顔になっている。そのことが私を苦しめる。直矢さんが何に悩んで、何を感じているのかをもっと知りたい。でも今の私は直矢さんに踏み込める立場じゃない。
「直矢さん……」
「はい、何ですか?」
「私、本当に直矢さんのものになってもいいですか?」
「え?」
「初めは本当に元カレのことしか考えていなかった。でも今直矢さんといられて心から嬉しい。だから恋人になりたいです」
「………」
「寂しいときだけの恋人じゃなくて、ずっとずっと、直矢さんの恋人になってもいいですか?」
今更こんなことを言うのは恥ずかしくて体中が熱くなる。たくさん気持ちを伝えられて、私がそれを受け入れるのは遅すぎたくらいなのだ。
直矢さんがどんな顔をしているだろうと見ると目を細めて笑っている。
「これからは寂しいときだけじゃなく、美優が楽しいときも怒っているときも悲しいときも、僕はそばにいてもいいですか?」
「はい。直矢さんがいいです」
いつだって私の心を揺さぶったのは直矢さんだったから。
「でも、直矢さんが私を悲しませることだけは勘弁ですよ」
「それはもちろんしません。言ったでしょう。美優を傷つけて泣かせたりしないって」
そう言って私が照れるほど真剣に見つめられる。
「戸田美優さん、僕の恋人になってください」
「はい、よろしくお願いします」
二人して笑った。
思いが通じ合うことが心から嬉しい。