聖夜の奇跡


直接先生と顔を合わせたのは、やっぱりその翌日だった。


とてもじゃないけど、金曜日のお詫びもお礼も言える雰囲気じゃなかった。
だって、その金曜日のことなのだ、藤川師長が倒れたのは。


思い出させるようなことすら、言ってはいけない気がして、それくらい先生の顔は憔悴していた。


検査の合間も、いつもならずっと内視鏡室で他の先生の検査を見守ったり研修医の指導をしたり、急患でもない限りここにいるのに。
自分の患者さんがいなければ、すぐに居なくなってしまう。


その日の内視鏡当番の看護婦さんが、教えてくれた。


すぐに命の危険があるわけじゃなく、一般病棟に移されたことや。


1週間経っても意識が戻らなければ、目を覚ます可能性はほぼなくなる、と脳外科の先生に言われてること。


あれから、先生はずっと家にも帰らず、患者さんがあるとき以外はずっと病室につきっきりだということ。



「……え。でも、それって…家大丈夫なんですか」



先生には、奥さんも子供もいる。
子供さんは、まだ小学生の筈だった。


藤川師長が心配なのはわかる、でもそれでは。
家庭が破綻してしまうではないか。



「ね。それだけ、師長さんが大切なんでしょうねー…」



いやいや。
そんな、単純に納得していい問題なの?

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