聖夜の奇跡
「あっ」
その、デスクの上に先生のPHSが忘れられていた。
どうしたものか、悩む。
いつもの先生なら、すぐに気がついて取りに戻るだろうけど、今はそれは期待できない気がした。
かといって、そのまま放っておくのも、良くない。
いざというとき、先生が予定通りの場所にいれば先ほどみたいに内線でもつながるがイレギュラーな動きをしているときにはPHSがなければ繋がらなくて。
場合によれば患者さんの一刻を争う場合もあるのだ。
そして、今まさに先生の動きはイレギュラーだ。
悩んだ挙句、4階まで届けに行くことにする。
先生は間違いなく、師長の病室だろうけど、そこへ届ける勇気はないしナースステーションに預けよう。
そう決めて、片付けは後回しにして内視鏡室を出て階段を駆け上がる。
4階のフロアを、ナースステーションに向かって歩いて、あと少し。
見つけてしまった。
半分開いたままの引き戸の病室。
余程慌てて入ったのだろう。
見てはいけない、と思いつつ、前を通る瞬間に見えて思わず足を止めてしまった。
白衣の横顔。
ベッドの脇に膝まづくようにして、ベッドから覗く細く白い手を握りしめていた。