恋におちて


「やべっ……」

あのあと時間と場所が決まったら
連絡するという親父の言葉もそこそこに
これ以上の面倒はごめんだと
早々に実家を後にした俺は、
日々の激務に追われ、
見合いのことをすっかり忘れていた。

親父からのメールに思わず声が漏れた。

「どうしたの?」

「あっ?……あぁ親父から。」

「ふぅ~ん」

目の前に座る彼女…さなえから
疑いの眼差しを向けられる。

「たいした用じゃないから気にすんな。」

「………そ。」

まだ納得いかない素振りで
顔を覗きに込んでくる彼女に

「早く食え。部屋、取ってあるから。」

「ねぇ…もう少し言い方があるんじゃない?」

今までの疑いの眼差しもどこへやら…
誘うような眼差しに変わっていた。


同じ病院で働く彼女に
いつまでほっとく気?と
誘われたのは勤務明けの駐車場。

いつまでと言われるほど間が空いたか?
と思ったが、腹も減っていたし
断る理由もないから、そのまま車に乗せ、
いつものホテルで食事をすることにした。

部屋を取ったのは運転して帰るのが
面倒だったから。

一応健全な男だからその気がないと
言えば嘘になるが、何が何でもというほど
飢えている訳でもない。


21時50分…
腕時計で時間を確認し、
メールの内容を思いだして、
今日も寝不足になることを覚悟した。


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