キミとまた違う未来で、この桜を見上げよう。
でも乃々葉はその教科書を手に取り、希穂ちゃんの苦しみを受け止めるように見ている。
「…私、は、家族から、愛されない、辛さは、わからない。
でも、苦しい、っていう、気持ちは、分かるから。
こうやって、たくさん、苦しんだから……」
乃々葉が驚いて見ているということは、希穂ちゃんはきっと誰にも言わなかったんだ。
それは両親にも。
「私、は、乃々ちゃんが、羨ましい。
こうやって、手話をしなくても、話せる、友達がいて…補聴器を、付けなくても、口の動きを、見なくても話が、聞ける、から。
お母さんと、お父さん、は優しい。
でも、この耳の、せいで、いじめられて、どうして、他の子みたいに、健康に、産んでくれなかったの、って何度も、思った。
でも、乃々ちゃんに、出会って、ちゃんと、"私"、を見てくれた。
手話も、私の、ために、何度も、練習して、くれた。
そんな、乃々ちゃんから、あんな言葉、聞きたく、なくて、叩いちゃった…」
乃々葉は涙を堪えるように持っていた教科書を強く握った。
「私、が、傍にいる、だから、輸血、してほしい」
「…でもあいつは…あーしにとっては…っ」
希穂ちゃんが手を震えを抑えながらもずっと隠していたことを、本音を乃々葉にぶつけた。
乃々葉も受け止めて、向き合って前を向いて進もうとしている。
でもまだ乃々葉の過去が邪魔をしている。