キミとまた違う未来で、この桜を見上げよう。
「あ、あの!他人の私が言うのも…」
「……ありがとう」
「…え?」
今回の乃々葉の決断を言おうと思ったら小さいけど聞こえてきたのは感謝の言葉だった。
その女性は管が出ている腹部を優しく押さえながらこっちを向いた。
「…ありがとうと、あの子に伝えてくれますか?
きっと私からじゃ聞いてくれないと思いますから…」
眉をハの字にして微笑むその姿は血は繋がっていないけれど、どこか乃々葉に雰囲気が似ていた。
「…それは元気に退院して、乃々葉…乃々葉さんに直接言ってあげてください。
乃々葉さんは素直じゃないから色々言うかもしれないけど、きっとあなたからの言葉を待ってるはずです」
私は知っているから。
家族に裏切られる悲しみも、家族と寄り添うあたたかさも。
分かっているからこそ、この2人にはずっと悲しいままでいてほしくない。
お互いが素直になれないなら、乃々葉と希穂ちゃんが話したときのように私達が背中を押すだけ。
「お待たせしました。
担当の看護師がすぐに来ますので…玉山さん?
傷が痛むのですか?ゆっくり病室に戻りましょう」
看護師さんが戻ってきて、彼女はゆっくりと立ち上がり私と七笑にお辞儀をして歩いていった。
お辞儀をした彼女の目からこぼれ落ちた光は、きっと乃々葉と2人の明るい未来を照らしてくれるだろうと七笑と笑い合って確信した。