泥酔ドクター拾いました。
部屋に着いた時、彼女も俺も肩で小さく息をしていた。
ほんの10数段の階段を駆け上っただけだというのに、全速力で走ってしまったからだ。


突き刺さるような藤代さんの視線が痛い。

「実はさ、昔付き合っていた彼女から言い寄られていて、正直困っているんだ。さっき電話があって、ここに向かっているって。すまないが、ほんの数十分でいい。彼女の振りをしてほしいんだ」


藤代さんにみっともない姿なんて晒したくはないけれど、俺は足早に説明して、深々と頭下げた。

一瞬、深く眉間に皺を寄せたように見えた藤代さんだったのだけど、小さく頷く。

「こんな格好の私でよければいいですよ。今更帰ったところで、玄関や階段とかで鉢合わせしても修羅場になるだけだし。こんな話聞いて、あとで先生と元カノがどうなったか気になるんで。」

「申し訳ない!!」

彼女の返事に俺はもう一度深々と頭を下げる。
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