泥酔ドクター拾いました。
「あの患者、助けられなくてすまなかった」

「えっ……」

彼女の表情なんて見ることは出来ずにいたけれど、俺の言葉に驚いて彼女が視線を俺の横顔に移したことだけはなんとなく分かった。

「受持ちだったんだってな……」

「腹部大動脈瘤破裂じゃあ、仕方ないっていうか。高齢で手術もリスクが高いから出来ないとのことだったので。だけど、家族が看取ることが出来ただけでもせめてもの救いかなって思ってます。あの人、家族想いの方だったので……」

「結果は同じだったかもしれないけれど、もしかしたらもっと何か出来たかもしれないと思うんだよ。それに、そのせいで藤代さんを泣かせてしまったわけだし……」

そう言って、彼女に視線を移したら、彼女は驚いた顔をしているくせに、瞳からは涙が今にも零れ落ちそうになっている。

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