泥酔ドクター拾いました。
フロントガラスに叩きつけるように振る雨は、車内の音をかき消してしまう。

沈み込むような柔らかい革張りのシートにびしょ濡れの私は、少しでも汚しちゃいけないと背筋を伸ばして座ると、隣から柔らかな香りのするタオルを渡された。

小さくお礼を伝えてみたものの、きっと雨音で大和田先生には聞こえていないと思う。
それなのに、タオルを受け取った私を見ると柔らかく微笑んだ。

そんな笑顔で見つめられると先ほどまで体温を奪われた感覚すら覚えていたというのに、急に身体の奥が熱を帯び始める。

自転車では20分程かかる距離も、車ではマンションまであっという間に到着する。
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