泥酔ドクター拾いました。
「わざわざ、ありがとうございました」

少しだけ小降りになった空の下、大和田先生は私の自転車を車から降ろして、駐輪場まで運んでくれる。

そんな先生の後ろを歩きながら、背中に向かって声をかけた。

「同じマンションに住んでるんだから、こんな時は次から声かけてもらっていいから」

駐輪場に自転車を停めてくれた先生は、私に向き直して微笑んでくれる。

「でも、大和田先生だって忙しいでしょ」

いくらなんでも、そんな簡単に頼れないですよ。頼ってみたいけど。
そんな想いを心の奥でぼやいてみる。

「まぁ、時間があえば、だな」

そう言って先生は肩を竦めて可笑しそうに笑ったものだから、私はその笑顔から目を離せなくなる。
< 97 / 225 >

この作品をシェア

pagetop