魔法使いの巫女少女Ⅰ
「未来は強いね。」
そうぽつりと慎はつぶやいた。
でも未来は首を振るって言った。
「私は強くなんてないよ。ただ、怖いだけ。」
「怖い?」
「うん。だってこれをしたことでたくさんの人が私の手で死んだんだよ。それが正しいことだったなんてきれいごと、誰が信じてくれると思う?結局、私は無情な人殺しなんだよ。」
そう口早に未来は言った。
そうやって今までずっと生きてきたのだろう。
誰にも心のうちを話すことなく、ずっと一人で抱え込んでいたのだろう。
(でも、もうたくさん苦しんだはずなのにー。)
それでも未来は一人で抱えてここで死のうとしている……。
慎はそんなことはないよと首を振っていった。
「未来一人が抱え込む必要はないと思うよ。」
「えっ……?」
「未来は今まで十分苦しんだ。だから、忘れようなんてそんなことは言えないけど。でも」
もう一人で抱え込まないで―。
最後までは言わなかったけれど未来は聞き取ったのだろう。
未来のきれいな瞳に涙が流れた。
でもと未来は口ごもりながら言った。
「誰も、真実なんて求めてない。最初のことだって、知らないふり。私が人を殺したってことだけが事実だってされてるのに……。」
「でも、僕は信じるよ。」
慎はそう言い切った。
「世界中の誰も信じないかもしれない。でも僕だけは君がそんなことはないって信じてる。だって、未来はこんなにも優しいんだから―。」
それにと恥ずかしそうに言った。
「好きな子の言うことを信じない奴なんていないでしょ。」
そういわれて未来はきょとんとした。
「慎、好きな人がいたの?」
「うん、いるよ。とっても可愛くて優しくて、でも自分の気持ちに素直になれなくて、恋心に鈍感で……。でもそんなところ全部が好きなんだ。」
「えっ…と…。こんな姿見てその子勘違いしちゃうんじゃない?」
未来はこの状態を指さしていった。
今度は慎がきょとんとした。
「えっ?なんで?」
「だって、どう見たって友達にしてはおかしいでしょ?この態勢は。」
どうしたものかー。
今のこの流れで未来は慎が好きな人がこの態勢を見て勘違いをするといっている。
勘違いも何も、抱きしめてる未来が好きだといったのにー。
(ってか、好きでもない人を抱きしめる奴なんていないだろうに……。)
そう絶句している慎に未来はどうしたのと聞いてくる。
「慎、どうしたの?やっぱりこの態勢じゃだめだと思うわ。だからー」
放してという未来に慎は慎はすねた口調で言った。
「やだ。」
「やだって、でもいいの?」
「ってか、僕は好きでもない奴のこと抱きしめたりしないし。」
「じゃあ、こんなことさせてごめんね?」
「……いったい誰のこと好きだって思ってるの?」
もう我慢できなくって未来に聞いた。
すると、未来はとんでもないことを言った。
「オリガか、楓様かなーって。」
「あの2人のどこが可愛いの?」
「えっ…。じゃあ、舞か佳か凛?」
「あの3人のどこが可愛いの?」
「えっ……?じゃあ、洸?」
「兄を好きって…。第一、僕はノーマルだよ。」
野郎は対象外だといった。
「でも、ほかにいないと思うけど?」
「いるよ、すぐ近くに。」
そういわれて未来は周辺を見た。
そのしぐさから本当に色恋ごとには鈍感だなと思った。
「私たちのほかにここにはいないよね?」
「うん、そうだね。」
ここまでくればわかるだろうと、思っていた自分が恥ずかしい。
「慎って、ナルシストだったの…?」
未来のこの言葉を僕は一生忘れない。
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