オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~
それでいてやさしく、子供をあやすみたいにやさしく私の頭を撫でて、言い聞かせるように向居はゆっくりと続ける。


「そんなの、当たり前だろ。孤独じゃない人間なんているわけがない。俺だって同じだ。今までだって、独りでなんて頑張ってこられなかった」


向居が…?
こんなに大きくてたくましくて強い向居が、孤独を感じる時などあったのだろうか。


「告白しようとした寸前でお前が恒田に獲られて俺は本当に失望した。やさぐれてしんどくて…寂しくて、人肌恋しさのあまり、よく知りもしない女と付き合ったことも何度もあった。でも、どれも全然続かなかった。俺の頭の中には、いつだって逢坂都しかいなかったから」


抱き締められて密着した肌から染み込むように、その声はしっとりと私の心を満たし、温めていく。


「だって、仕事で突き放してしまおうとどれほど成果を出しても、お前が同じように成果を出して存在感を嫌でも見せつけてくるんだ。誰よりも有能で、誰よりも強くて、またといない良い女―――社内どころか業界内だって、お前ほどのハイスペッグはいなかった。―――でも」


まるで高価な品にでもふれるように、向居の手が私の頬をそっと包んだ。


「そうしてお前と競り合うことが、俺の孤独を埋めてくれたんだ」


向居はまっすぐに私を見つめた。
想いの溢れる、やさしい光を放つ目で。
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