空に虹を描くまで


場所取りをしようとか言っていたのに、あっという間に花火の上がる時間になってしまっていた。

少し屋台から離れると、人も少なくなり静かに花火を楽しめた。


「よかった。まだいい場所残ってたね」

夏の風が心地よく温まった体を冷やしてくれた。


「もう焼きそばとか冷めてんじゃね?」

「あ!すっかり忘れてた…」

わたしがそう言うと、陵は面白そうに声を上げて笑った。

「忘れないだろ、普通」

「わ、忘れちゃったの!早く食べよう」

「今更早くしても、もう変わんないと思うけどな」

陵の言う通り、焼きそばやたこ焼きはすっかり冷めていた。


だけど、不味くは感じなかった。

むしろすごく美味しい。


花火を眺めながら、風に当たり、隣には陵もいる。

すごく贅沢な状況で食べる焼きそばは、たとえ冷めていても、今まで食べてきた以上に美味しく感じた。


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