空に虹を描くまで
そして、またキャップを開けてお茶を飲み、ペットボトルの中は、あとほんの1口か2口くらいしか残っていない。
「ありがとう、150円だった?」
陵は小銭ケースを手に取り、中から100円玉と50円玉を取り出した。
「いいよ!わたしが勝手に買っただけだから!」
「でも、わざわざ買ってくれたんだろ?」
「色々良くしてもらってるお礼だから、そのまま受け取ってください」
頭を下げ、わたしに差し出された陵の手を覆い、自分から引き離した。
「わかった。じゃあ貰っとくよ」
そのまま「ありがとう」とまたわたしに礼を言うと、手の中にあったお金を再び小銭ケースに戻した。
「わたしの方こそ、ありがとね」
「何が?」
「たくさん!全部」
「全部ってなんだよ」
陵はそう言いながら笑った。
本当に全部なのに。
笑っている陵を見て思った。
だけど、わざわざ言わなかった。
伝わっていればそれでいいかな?という気がしたから。
「今日、晩御飯ご馳走になることになったの」
「へー、そうなんだ」
「陵は帰るの?」
「いや…」
そう言って少し考え込んだ。
「俺も食べてくよ」