空に虹を描くまで


わたしは、まだ学生だからって甘えていたんだ。

大学にも行くだろうし、そこで将来を決めたらいいって。


流されるがままでもいいって半分思っていた。


でも、無知と理解できるでは全然違う。

少しでも経験や知識があれば、ほんの少しでも理解や想像ができる。


わたしの手の動きが止まっているのを見ておじさんが語り始めた。

「鳥が飛んでるのを見たことあるだろ?」

「え?あ、はい」

急になんの話かと思い、思わず思考が停止する。

「始めは羽をばたつかせて空に舞うけど、風に乗ることさえできればほとんど羽を動かさない。鳥が羽を動かすのは前に進むためなんだ」


さっきまでの梓さんと話をしていた時と雰囲気が違う。

ガラス工芸をやっている時の表情だ。


「つまり言いたいことは、肝心なのは始めと風に乗る方法を知るのが重要だってこと」

「始めと風に乗る方法…?」



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