空に虹を描くまで


「そう。空を飛ぶまではある程度頑張らなきゃいけない。でも、飛んでしまえば、後は風に乗って身を任せるだけ。それでも、落ちないためにたまには羽を動かす必要があるけどね」


なぜ急にこんな話をし出したのか不思議だった。

だけど、今やっとわかった気がする。

おじさんが言おうとしていることが。


「佳奈子ちゃんも、飛ぶ方法さえ見つけられれば、あとは軌道に乗るだけだからね」

梓さんがわたしに優しく微笑んだ。

陵もわたしに微笑んでくれていた。


3人の優しさに心が温かくなった。

「ありがとうございます」

声を振り絞り答えた。

瞬きをすれば、雫が溢れそうになり、わたしは必死で堪えた。

何故、涙が出そうになったのかわからない。

ただ与えられた言葉が深く、胸に刺さり揺らいだ。

ストンと、何かがわたしの中に落ちたかのように。

三人の優しさに心が深く癒された。

何が悲しくて、何に感動して、涙が出るのかは理屈じゃ説明できない時もある。


今がまさにこの状況だ。


滲んだ視界を必死に晴らそうとして、息を大きく吸い込み深く吐き出した。

乾ききった口の中を潤そうと、わたしはコップを手に取り一気に喉の奥へと流し込んだ。

涙も乾き視界はいつもの通りに戻った。








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