【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難
「……アイツ、走らんと誓った口はウソか」
アルフレッドは、逃げていく背中をにらみつつ、吐き捨てるように言う。
再び追いかけようとする気配を感じ取ったシルディーヌは、アルフレッドの服の端をぎゅっと掴んだ。
このままでは楽しいはずのお出かけが台無しになりそうで、玉砕覚悟で気をそらすことを試みる。
「ね、アルフ。もういいでしょう?あの人は充分わかったはずよ」
「ふん、どうだかな。懲りずに繰り返す奴は山ほどいるぞ」
「そ、そうかもしれないけれど……」
アルフレッドは仕事熱心だから、悪いことをする人を許せないのだろう。
けれど、どうしてこんなにあの男性に執着するのだろう。
シルディーヌにぶつかっただけで、大悪人ではないのに。
「えっと、でも、アルフは今プライベートでしょう?私、アルフとお買い物を楽しみたいわ」
そう言った瞬間、アルフレッドは男性を睨みつけるのを止め、シルディーヌの方に向き直った。
「……お前は、俺と、楽しみたいのか?」
「ええ、そうよ。せっかくのお休みなんだもの。ほら、アルフも紅茶を買うって言っていたでしょう? 早くおすすめの紅茶店に連れて行ってほしいわ」
ね?と言って精いっぱいの笑顔を作って見つめると、アルフレッドの表情から暗黒さが消えうせ、いつもの雰囲気に戻った。
「そうだったな。早く行こう」
アルフレッドはシルディーヌの腰に手をまわして、そっと抱き寄せるようにする。