【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難
早く行こうと言いながらも、アルフレッドは動こうとしない。
シルディーヌの体をふわりと包んだ腕は、まるで高価な美術品を扱うがごとく慎重で優しい。
ついさっきまでは、鬼神のような腕力を見せていたというのに。
シルディーヌはそんなアルフレッドに戸惑いつつも、不思議と心地よさを感じていた。
ドSな男の腕の中が安心できるなんて、自分でもよく分からないが、いつまでもこうしていたくなる。
でもここは商店街のど真ん中。
今は、太った男性の一件でみんなの注目を集めてしまっているはず。
それに恋人同士でもないのに密着しているのは、すごくおかしなことだ。
恥ずかしくなったシルディーヌが離れようと身じろぎするけれど、容易く解けると思っていたアルフレッドの腕は、びくともしない。
シルディーヌを腕の中に入れて離さない理由が見つからず、もしやこれも“拘束”という名の罰なのかと思い至る。
商店街に入る前に“人が多い”と注意を受けていたことは確かで、周りを見ずに走りだそうとしたのは、いけないことだった。
謝ろうとして口を開きかけると、不意にアルフレッドが歩き始めたのでタイミングを失う。
シルディーヌの腰を引き寄せたままで、足取りは大切な荷物を運ぶかのように慎重。
それはシルディーヌのことを気遣っており、縦横無尽に歩く人並みからしっかり守られていると感じる。