【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難


急な態度の変化に戸惑いつつもアルフレッドを見上げれば、周囲に視線を配りながらもしっかり前を向いていた。

その精悍な横顔を見、シルディーヌはあるひとつの言葉を頭に思い浮かべた。

でもそれは、これまでの言動から考えれば有り得ないようなもの。

だがしかし、今のアルフレッドの紳士的な様子は、その可能性がありそうで……。

でもまさか、そんなはずは……。


「あの、アルフ。ちょっと待って?」

「なんだ。また寄りたい露店を見つけたのか。面倒な奴だな。どこだ」


舌打ちをしそうな勢いで言われてしまい、さっき頭に浮かべた甘い言葉は早々に打ち消した。

やっぱりいつもと変わらない、イジワルアルフだ。


「違うわ。この歩き方は、おかしいと思うの。私がアルフの腕を掴む約束だったでしょう?」


シルディーヌは、自分の腰にあるアルフレッドの手の甲をペシペシと叩いた。

精いっぱいの、離してほしいアピールだ。


「なんだ、そんなことか」

「ここは公道よ。とっても大事なことだわ」

「そうだな、大事なことだ。お前が夢中になってコロコロ飛び回ると予想はしたが、まさか人とぶつかって吹っ飛ぶとは思わなかった。ちょっと、目を離したすきに……」


いったん言葉を切ったアルフレッドの表情が、後悔をしているように歪んで見える。


「この先は、俺がお前を捕まえて歩くことにする。だから、ペシペシ叩かれても、抓られても、ひっかかれても、片時も手を離すつもりはないぞ」


シルディーヌの腰にある手に、僅かに力が入った。

その語調と様子から、アルフレッドが本気なのが伝わってくる。


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