【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難


アルフレッドは、迷わずにキーマンを購入している。

それに対し、シルディーヌはキャンディの先輩侍女が運命の人に出会ったというだけで、紅茶店に行きたいと思ったため、なにを買うと決めていない。

いつも飲む紅茶はダージリンだが、今日は初給金を使うのだ、できれば新しいものに挑戦したい。


「お連れさまはお迷いのご様子ですね。これは新発売の紅茶です。あちらに座って試飲できますが、どうですか?」


う~んと悩み続けているシルディーヌに、かわいい女性店員さんが店の隣にある喫茶コーナーを示した。

そこでは数人の男女が花柄のカップを手に談笑している。

割と広めのスペースで椅子も大きく、ゆったり落ち着いた雰囲気がして、とても素敵だ。


「今なら特別に、焼き立ての紅茶クッキーもお付けしますよ」

「まあ、本当ですか!?」


にっこり笑顔の店員さんに、シルディーヌも満面の笑みを返す。

きらきらと光る瞳でアルフレッドを見つめて促すと、「む……仕方がないな」とため息交じりに言い、喫茶コーナーに移動する。

向かい合って座って待っていると、すぐに紅茶が運ばれて来た。


「新発売のアーセラです。香りがいいので、ストレートでどうぞ」


カップに注がれた液体はオレンジ色で、果物のような甘い香りが立ち上っている。


「いただきます」


さっそく口にすると、苦みがなくて柔らかな甘みと香りがふわっと広がり、最後に少しの酸味が口中に爽やかさを残した。

ほんわりと温かい気分になり、心も体も癒されるいい感じだ。


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