【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難


侍女のお茶の時間に飲んだら、身も心もすっきりして、きっと最高な気分になるだろう。

これを買うことに決めてアルフレッドを見れば、カップを持ったまま窓の外を見ていた。

太った男性に吹っ飛ばされたあの時も、アルフレッドは他所を注視していたことを思い出す。

今はなにを見ているのだろうか。

何気なく視線を辿れば、若い女の子のグループが目に入り、何故かムッとしてしまう。


「アルフったら、どこを見ているの? さっきも、別のところを見ていたでしょう?」

「こう人が多いと、挙動不審な奴がすぐ目につくんだ。さっきお前が露店を見ていたときも、スリっぽい男を見つけたな」

「え!? あのとき、そんな人がいたの? 今も外にいるの?」

「ああ、商店街に来ているのに、店じゃなくて人ばかり見ている奴がいる。目つきも十分怪しいな」


そう言いながらも、アルフレッドは落ち着いた感じだ。


「捕まえなくていいの? 職務質問とか、しないの?」

「しない。今は団服を着てないし、ましてや希少なプライベートだ。ここは国家警備隊が管理しているから、事件が起きても、奴らに任せておけばいい」

「そういうものなの?」


鬼神と呼ばれる黒龍の騎士団長とは思えない発言で、シルディーヌは意外に思う。

犯罪を見つけたらすぐさま飛んで行って捕まえそうなのに。

現に、シルディーヌにぶつかっただけの男性を、瞬く間に捕まえて来たのだから。

でも考えてみれば、騎士団長だからといって、プライベートに仕事をするのはおかしいことかもしれない。

アルフレッドの対応は正しいのだろう。

< 108 / 202 >

この作品をシェア

pagetop