【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難
侍女のお茶の時間に飲んだら、身も心もすっきりして、きっと最高な気分になるだろう。
これを買うことに決めてアルフレッドを見れば、カップを持ったまま窓の外を見ていた。
太った男性に吹っ飛ばされたあの時も、アルフレッドは他所を注視していたことを思い出す。
今はなにを見ているのだろうか。
何気なく視線を辿れば、若い女の子のグループが目に入り、何故かムッとしてしまう。
「アルフったら、どこを見ているの? さっきも、別のところを見ていたでしょう?」
「こう人が多いと、挙動不審な奴がすぐ目につくんだ。さっきお前が露店を見ていたときも、スリっぽい男を見つけたな」
「え!? あのとき、そんな人がいたの? 今も外にいるの?」
「ああ、商店街に来ているのに、店じゃなくて人ばかり見ている奴がいる。目つきも十分怪しいな」
そう言いながらも、アルフレッドは落ち着いた感じだ。
「捕まえなくていいの? 職務質問とか、しないの?」
「しない。今は団服を着てないし、ましてや希少なプライベートだ。ここは国家警備隊が管理しているから、事件が起きても、奴らに任せておけばいい」
「そういうものなの?」
鬼神と呼ばれる黒龍の騎士団長とは思えない発言で、シルディーヌは意外に思う。
犯罪を見つけたらすぐさま飛んで行って捕まえそうなのに。
現に、シルディーヌにぶつかっただけの男性を、瞬く間に捕まえて来たのだから。
でも考えてみれば、騎士団長だからといって、プライベートに仕事をするのはおかしいことかもしれない。
アルフレッドの対応は正しいのだろう。