【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難


「ええ、そうなの。二人分入れてきたの。だって、私はいつもひとりで休憩してるでしょう? 話し相手がいなくて、いつもとても寂しいわ。だから、アルフとお茶を飲みたいって思ったの。アルフもゆっくりする時間が必要だと思うし……でも、忙しいみたいだから、駄目かしら……」


シルディーヌがしゅんと肩を落とすと、アルフレッドは椅子をガタッと揺らしてにわかに立ち上がった。


「いや、そうでもないぞ。仕事中に茶を飲む習慣はないが、仕方がないから付き合ってやる。早くよこせ」


スタスタと応接セットの方へ移動し、ソファにドカリと座った。

シルディーヌは急いでカップに紅茶を注ぎ、アルフレッドに差し出した。


「アルフが好きなキーマンじゃないけれど、どうぞ」

「む……あの時の新発売の紅茶か」


お茶は丁度飲み頃になっており、濃さも温度もいい塩梅だ。

シルディーヌはカップに口をつけながら、こっそりアルフレッドの反応を見る。

人買い組織のアジトから過激な救出をされてから数日が経つが、アルフレッドはいつもと変わらずに仕事中はシルディーヌに厳しく接してくる。

こうして向かい合ってお茶を飲んでいる今も、まったく穏やかな表情にならない。

ほっと一息とか、癒されているとは程遠い感じだ。

お茶で快適になってもらう作戦は、どうやら失敗のよう。


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