【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難
「断るのは、そんなにたいそうな事じゃないぞ。フューリ殿下とは、騎士学校時代に知り合った友人だ。俺の性格をよく知っているから、社交に関しては、無理を言ってこないんだ」
「でも、それにしても、無礼な気がするわ」
「違うな。あれは半分冗談も入っているんだ。にやっと笑って、“どうだ、暇つぶしに出ないか?”って誘い方なんだぞ……まあ、王太子として出席を命じられていたら、また別だったがな」
アルフレッドは平然と言い、お茶を一気に飲み干して立ち上がった。
「ごちそうさま。こうして一緒に飲むなら、アーセラも悪くないな。ちょっと気分転換になった。これから仕事がはかどりそうだ」
ぽそっと言ってシルディーヌの頭をポンと撫でたアルフレッドの瞳が、とても穏やかに見える。
不意打ちに褒められて優しくされて、シルディーヌの胸がトクンと鳴った。
「それ、本当なの?」
「俺は、ウソは言わない」
「じゃあ……これから、毎日入れてもいい?」
「ああ好きにしろ」
そう言い置いて、アルフレッドは執務に戻って行く。
自分のしたことが役に立った嬉しさと、滅多にみられないアルフレッドの穏やかな瞳が見られた喜びとが、シルディーヌの胸を支配する。
なんとも言えないほんわかした気持ちに包まれながら後片付けをし、その後の仕事を上機嫌で終える。
そして、結局今度の舞踏会に出るのかどうかはっきり聞いてないことに気づいたのは、ずっと後の、侍女寮にもどってからのことだった。