【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難
きっと、アルフレッドは舞踏会には来ない。チャラチャラした世界は苦手だと言っていたのだから。
そう自分で判断したシルディーヌは、アルフレッドに出欠を訊かぬまま王宮舞踏会当日を迎えていた。
舞踏会の始まりは夜の七時で、朝から王宮全体がそわそわした空気に包まれている。
なにしろ伯爵家以上の貴族が集まる、年に一度の大舞踏会なのだ。
アルフレッドは『フューリ殿下の暇つぶし』と言ってのけたが、相当な一大イベントである。
侍従たちが最後の調整とばかりに王宮内を忙し気に走り回り、王宮警備隊は夜に向けて警備の準備に余念がない。
そんな中黒龍殿だけはいつもと変わらず、騎士団長であるアルフレッドをはじめ、団員たちは日常の任務を淡々とこなしている。
舞踏会に参加するフリードまでも普段と変わらない様子で、まるでここだけが別世界のよう。
気になってフリードに尋ねると、騎士団員は警備を要請されていないため、なにも準備することがないから日常のままだと返ってきた。
黒龍殿の中でウキウキそわそわしているのは、シルディーヌだけだ。
夜に思いをはせながら仕事をこなしたシルディーヌは、侍女寮に戻るなり急いでドレスに着替えてペペロネの部屋を訪ねた。
ここでキャンディたちも加わって、お互いの世話をし合って身支度を整える手はずなのだ。