【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難
「フリードさん、こんばんは」
「やっぱりそうでしたね。見違えるような美しさで、声をおかけするのを一瞬迷いました」
フリードは濃紺のタキシード姿をしており、いつも全身真っ黒な団服姿しか見ていないので、とても新鮮に映る。
いつもの凛々しさに加えて上品さが前面に出ており、フリードも甘~い言葉が似合いそうな雰囲気を醸し出していた。
「フリードさんこそ、見違えたわ。とても素敵なんですもの」
親しい人に会えたことがうれしく、シルディーヌの緊張が一気に解ける。
「そうそう、今日は団長も来られるはずですよ」
「そうなの? アルフはなにも言っていなかったわ」
「なにも言っていなくとも、来られるでしょう。シルディーヌさんが心配なはずですから」
そう断言するフリードも、はっきりとアルフレッドの出欠を知らない様子だ。
フリードと話をしてリラックスしているシルディーヌのそばに、背後からすすすと近寄って、つんつんとドレスの袖を引っ張る者がいた。
頬を染めて瞳を潤ませた、恋する乙女のペペロネだ。
ひと回りして戻って来て、シルディーヌと一緒にいるフリードを見つけたのはいいが、自分からは話しかけられないらしい。
そんなペペロネを見て、フリードはふわりと笑った。
「ああ、あなたは、あの時の事件で一緒だった……たしか、ペペロネさんですね? 黒龍騎士団副団長のフリードです」