【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難
丁寧に礼を取って挨拶をするフリードに対し、ペペロネも令嬢らしく礼を返す。
「フリードさま。私のこと覚えていてくださったのですか?」
「もちろんですよ。美しい女性のことを忘れるはずがありません」
「まあ、そんな、美しいだなんて……!」
感激のあまりに卒倒しそうになるペペロネを、シルディーヌは慌てて支えた。
やっぱりフリードは、騎士とはいえ生まれながらの貴公子だ。女心をくすぐる言葉をさらりと言ってのける。
「ペペロネ、しっかりして」
「ありがとう。大丈夫よ、シルディーヌ。今は勝負どころですもの。がんばるわ」
しっかりと自分で立ったペペロネから手を離すと、大広間の上手側にいる人たちがざわめき始めた。
「ああ、殿下がお出でになりましたね」
フリードの言った通り王太子殿下が現れたようで、じきに音楽が止み、話し声も静まった。
「今宵は、年に一度の宴だ。みんな日頃の憂さを忘れ、大いに騒ぎ、踊り、楽しんでくれたまえ!」
王太子殿下が簡単な挨拶をされた後、大広間の中がわっと沸きかえり軽快な音楽が流れ始めた。
王太子殿下が近くにいた令嬢を誘ってダンスを始めると、老若男女も手を取り合って中央に進み出る。
音楽に合わせて、色とりどりのドレスがふわりふわりと可憐に舞い、花が咲いたように美しい。