【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難


「フリードさま、お相手をお願いしますわ」


ペペロネが勇気を出して誘うと、フリードは優雅に手を差し出した。


「ペペロネ嬢、喜んでお相手いたします」


うれしそうにフリードの手を取ってエスコートされていくペペロネを見送って、ふと周りを見れば新米侍女仲間がひとりも近くにいなかった。

みんなそれぞれダンスに誘われており、踊っているのが見える。

ひとり取り残されたシルディーヌは、とりあえずアルフレッドを探してみることにした。

こういう場が苦手だと言っていたが、フリードの推測通りに、本当に来ているのだろうか?

きょろきょろしながら歩くシルディーヌの前に、突然人が現れて行く手を遮るように立った。

それは黒地に金の刺繍の入った豪華な衣装を身に纏った……。


「やあ、シルディーヌ。久しぶりだね。あれ以来、害虫に遭遇してないかい?」

「お、王太子殿下! はい、あの、今宵はご機嫌麗しく……」


まさか王太子殿下にお声をかけていただけるとは思わず、半ばパニックになりつつも礼をとって上ずった声を出すと、殿下はあははと声を立てて笑った。


「ああ待った。今夜は堅苦しい挨拶はしなくていいよ。それより、二曲ほどダンスの相手をしてくれないか?」


急に声を潜めて頼むように言う王太子殿下の麗しい顔を、シルディーヌはきょとんとして見上げた。


「……はい? 私でいいのですか?」

「ああ、君がいいんだ」


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